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ブリタニカ草稿(最終稿)第15節 [読解シリーズ]

【現象学の「究極的」問題】

○全ての理性的な問題は、現象学の問題である

○伝統的な哲学の問題も、超越論的な経験の構造、本質直観から出発することで解決の道が得られる

○現象学により、自己と関係するものは、超越論的な構造にあるものとして理解される

「世界」や「事物」や「他者」や「私の身体」や「私の心理」なども全て、超越論的な構造(○○についての意識、意識によって構成されたもの、自我と相対的)として理解される。

○現象学により、その構造に含まれる規範も認識でき、それを理解することで現実的な「生の目的、傾向」も認識できる

○現象学は「普遍的な理性」を求めるため、超越論的な構造をもつ自己自身を洞察する

○それは「無限の彼方の普遍的な理念」を求めることであり、「永遠の真理」と「純正な人間性の理念」に向かう努力に奉仕することである

○自己の本質構造を認識することにより、現実的な生に含まれる「普遍的な理念」も洞察でき、実践的に実現していく

「生の目的、傾向」とは、人間に本来備わった意識の本質的な傾向として示されるものである。それは、本質直観により自己洞察され、また他者とも共通にもつ人間の本質構造、普遍的な規範として洞察される。それを認識することで、現実の中での「普遍的な理念」も認識でき、「生の目的」も実践できる、とフッサールは言う。

要するに、「人間がアプリオリにもつ本質傾向」を理解することで、その指し示す目的、傾向を理解し、実践的に実現していく、そして、その傾向自体も無限に洞察していく、ということである。

目的論に関するフッサールの考えは、次の言葉がよく表している。

「理性とは、人格的な活動と習慣の中で生きている…人間の特性である」

「この生活は、人格的なものとして絶えず発展を目指す…絶えざる生成である」

「哲学とは、理性主義以外の何ものでもないが、…絶えざる自己啓発の運動のうちにある理性そのものである」

「人類とは、おのれを理性的なものとして理解するもののことである」

「人類は理性的であろうと意志することによってのみ理性的たりえるということ、それは理性へ向かう生活と努力が果てしのないものだということを意味するということ、理性とは、人間としての人間がその内奥からして意志するもの、それだけが人間の心を鎮め、「至福」に至らしめるものだということ、理性には「理論的」とか「実践的」とか「審美的」など区別はないということ、人間存在とは、目的論的、当為的存在であり、全ての自我的行為や意図のうちにこの目的論が支配しているということ、人類は、自己理解により全てのもののうちに必当然的な目的を認めるということ、究極的な自己理解によるこの認識は、アプリオリな原理に従う自己理解、つまり哲学というかたちでの自己理解以外のいかなる形態をもとることはないということ、こういったことを理解しているということである」
(以上、危機 第73節)

※第73節は草稿の部分である

○目的論、倫理学、歴史哲学の問題も現象学の枠内にある

○そして、意味ある問題の全てが、超越論的な精神性の問題として現象学に含まれている

倫理学や歴史哲学も、(超越論的な)精神性の構造として理解される。しかし、倫理や歴史に関して、経験的な構造や精神化していく構造、共同的、文化的なものの理解を、人間に内在する本質構造として解析するという難題なテーマである。

この「目的論、倫理学、歴史哲学」というのは、対象的な意味、目標ということではない。ある正しい目的の持ち方、倫理観の持ち方、歴史観を持ち方、ということではない。

我々は「自我構造-と相関的な-そのつどの意味」というように、そのつど対象化された意味(目的、倫理、歴史)をもち、それを追求することもあるが、その普遍性、正当性、究極意味を求めても相対主義、ニヒリズムに陥るだけである。自我構造に内在する本質傾向としての「目的論、倫理学、歴史哲学」を分析するのでなければならない。

例えば、「歴史的なもの」もそのつど私の中で構成、再構成され、統一的なものとして記憶、精神化されていくが、その精神化の本質構造を洞察し、その進展のプロセスを理解することがメインで、正しい歴史観のもち方などということではない。

目的論などに見られるフッサールの(究極的にも見える)考えに対して、肯定するにせよ批判するにせよ安易な解釈はその本質を見失う。いずれにしても難しいテーマである。


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